スーツケースの素材|全7種類の材質特徴とメリット&デメリット

スーツケースの素材は、スーツケースの軽量性と耐久性を決める重要なポイントです。

ただし、「いろいろ素材がありすぎてどのスーツケースを選んだらいいのかわからない…」という方もおられると思います。

そこで、今回はスーツケースに使用されている材質それぞれの特徴メリット・デメリットを、軽量性と耐久性に注目しながらご紹介したいと思います。

長く愛用できるスーツケース選びにお役立て下さい。

この記事の
筆者:ジンベエ
海外ガイド歴12年。小さな旅行情報会社の代表をしております。
趣味がスーツケース収集で、使用したスーツケースは70台以上。お役に立つ情報をお届けします。

スーツケースの素材について

フリクエンターのボディ

スーツケースに使われる素材は大きく分けると7種類あります。

現在主流になっているファスナータイプ・フレームタイプで5種類、ビジネスマンなどに人気のソフトタイプで2種類です。

たくさんあって大変そうですが、実は選ぶのはそんなに難しくありません。

まず、ほとんどの方から選ばれているファスナータイプのスーツケースの材質から見てみましょう。

ファスナータイプのスーツケースの素材【5種類】

スーツケースの材質

両側の硬いボディを真ん中のファスナーで閉じるファスナータイプは、現在のスーツケースの主流になっています。

コスパにも優れ、デザインや機能性などの選択肢も豊富なので、他のタイプのスーツケースに特別なこだわりがなければ、ファスナータイプを選べば間違いないです。

ファスナータイプのスーツケースには、5種類の材質があります。

それぞれの特徴とメリットデメリットを確認してみましょう。

 1.ポリカーボネート

おすすめの素材!

フリクエンターのマーリエ

最近のスーツケース素材の主流になっているのがポリカーボネートという素材です。

樹脂の中で最高の耐衝撃性を持ち、特殊部隊の防弾材料にも使われています。

耐候性や耐熱性、耐紫外線性にも優れるため、スーツケースと相性が良く、大手メーカーを中心にほとんどのスーツケースがポリカーボネートで製造されています。

相場的には2万円以上のほとんどのスーツケースはポリカーボネート製になってきています。

材質:ポリカーボネートのメリットデメリット

  • 加工がしやすい
  • 非常に高い耐衝撃強度
  • 軽量性に優れる
  • 価格がABS樹脂より高い

低品質のポリカーボネート100%に注意

修理が必要なスーツケース

ECサイトなどで検索すると、最近ではノーブランドのスーツケースでもポリカーボネート100%を謳っているものがあります。

ただし、ポリカーボネートは品質の差が出やすく、純度が低いポリカーボネートを使ったものや、強度計算がしっかりされていないノーブランド品は、1回の使用で割れてしまうことも少なくありません。

「ポリカーボネート100%」という宣伝だけで安心するのではなく、どんな品質のポリカーボネートを使用しているのかも確認してみましょう。

例えば、2万円~3万円の予算があれば、ドイツブランドのバーマスのスーツケースには、ポリカーボネートプラスと呼ばれる3層構造の複合素材が採用されています。

ジンベエ

バランスに優れた素材で、スーツケースを選ぶ上で一番おすすめです。

 2.ポリプロピレン

パリセイド2-Zのボディ

ここ1,2年で国内メーカーでも採用するモデルが増えつつある素材のポリプロピレン

強度の高さに加えて、樹脂の中で最軽量級という特徴があり、強度を保ちつつ非常に軽いスーツケースを作るのに相性の良い素材です。

比重が非常に小さいため、水にも浮きます。

主に軽量性が求められる自動車部品などによく用いられてきましたが、スーツケースに採用する場合、染色するのが難しかったり、耐紫外線性を向上させるために工夫が求められたりなど、技術力のあるメーカーでないと扱いが難しい材質でもあります。

材質:ポリプロピレンのメリットデメリット

  • 非常に軽量性に優れる
  • 高い耐衝撃強度
  • コストがかかる
  • 少しペコペコ感がある

最近ですと、世界トップラゲージメーカーであるサムソナイト傘下のアメリカンツーリスターのキュリオというスーツケースがポリプロピレンの素材をメインに採用しています。

ジンベエ

キュリオは同ブランドベストセラーのサウンドボックスの後継モデルで、拡張機能やサスペンションキャスターなど高機能ながらポリプロピレンを採用することでLサイズでも3kg台と超軽量です。

 3.ハイブリッド樹脂(ABS樹脂+ポリカーボネート)

グリフィンランドのFK1037-1

格安スーツケースに多いのがハイブリッド樹脂という素材。

“ハイブリッド~”と聞くと高性能そうな印象を受けますが、簡単に言えばABS樹脂とポリカーボネートを混ぜて作った素材です。

ABS樹脂の割合の方が多ければABSハイブリッド樹脂、ポリカーボネートの割合の方が多ければポリカーボネートハイブリッド樹脂と呼ばれます。

ポリカーボネートは軽量&耐衝撃性に優れるスーツケースにはピッタリの素材ですが、ポリカーボネート100%でしっかりしたスーツケースを作るとコストがどうしても高くなるため、安価なABS樹脂を混ぜることで、価格×軽量性×耐久性のバランスを保っています

ポリカーボネート100%のモデルよりもペコペコ感が少ないのもメリットかもしれません。

価格帯的には、5,000円~15,000円くらいの格安スーツケースに多い材質です。

材質:ハイブリッド樹脂のメリットデメリット

  • 加工がしやすい
  • 高い耐衝撃強度
  • 軽量性に優れる
  • ポリカーボネート100%より価格を抑えられる

1万円以下でスーツケースを探すとほとんどがハイブリッド樹脂のスーツケースになりますが、かなり品質面で怪しい製品も多いのが現実です。

格安でもしっかりとしたスーツケースを作っているグリフィンランドレジェンドウォーカーといったメーカーもあるので、1万円以下のスーツケースを選ぶ場合は安心できるものを選ぶようにしましょう。

 4.ABS樹脂

ABS樹脂のスーツケース

いわゆる一昔前のスーツケースの素材

現在では、ABS樹脂100%のスーツケースを新品を買うことは難しいでしょう。

なによりスーツケースが重くなりやすく、空のスーツケースで8kg前後が当たり前と、最近の軽量スーツケースの2倍以上の重さです。

ただ、最近のスーツケースは薄くても強度が十分出せるため、ペコペコした印象があり、一昔前のABS樹脂のガッシリとした印象のスーツケースを懐かしむ40代・50代の方も少なくないです。

材質:ABS樹脂のメリットデメリット
  • 加工がしやすい
  • 安価
  • 耐衝撃強度に優れる
  • 重量が重くなる

 5.メーカー独自の素材

プロテカエアロフレックスライトの外観

エースやサムソナイトといった大手メーカーですと、豊富な資金力とこれまでのスーツケース作りのノウハウを生かして、独自の特許を取得した素材を開発しているところもあります。

各メーカーのモデルの中でも、特に軽量性を追求した高級モデルに採用されることが多いです。価格も6万円前後するものが多いです。

素材の特徴は、各メーカーによって異なります。

  • エース ProtecA 「ウルトラストリング」
    機内持ち込みサイズで1.7kgという圧倒的な軽量性。
    材質はグラスファイバーを複合した特殊素材のため、糸で紡いだような独特の外観になります。
  • サムソナイト 「CURV」
    ポリプロピレンを編み上げて熱圧縮することで作られる特殊素材。CURVを採用したコスモライトがデビューした際には「指1本で持てる軽さ」と大きな話題になりました。

最近ですと、サムソナイトのベストセラーになっていたコスモライトの後継モデルとして、C-LITEが発売されました。

C-LITEにも独自素材ののCURVが採用されており、指一本で持てる軽さです。

ジンベエ

スーツケースの素材からそれますが、C-LITEはコスモライトで評判の悪かったT字のキャリーバーが通常の2本タイプに戻ったのも評価ポイントです。

以上がファスナータイプに採用される主な5種類の素材の特徴やメリット・デメリットです。

まとめてみると…

  • ポリカーボネート【おすすめ】現在の主流。2万円前後~。軽量性×耐久性は抜群。
  • ポリプロピレン…圧倒的軽量性で注目の新素材。価格は2万~3万円くらい。
  • ハイブリッド樹脂…1万円以下で探すならこの材質
  • ABS樹脂…一昔前の素材。
  • 各メーカーの特許素材…大手メーカーだからこそのこだわり軽量素材。6万円くらいから。

フレームタイプのスーツケースの素材

スーツケースのファスナータイプとフレームタイプ

ファスナーの代わりに金属製のフレームを採用しているのがフレームタイプのスーツケースです。

日本でも10年前くらいまではフレームタイプが人気でしたが、現在ではファスナータイプの人気で各メーカーそんなに多くのフレームタイプをラインナップしていません。

ただし、衝撃が中に伝わりにくいなど、フレームタイプならではのメリットがあるため、根強い人気があるのも事実です。

フレームタイプのスーツケースはボディ部分にはファスナータイプと同じ材質が使われるため、基本はすでにご紹介した5種類の素材が使われます。

*リモワなどの一部高級スーツケースにアルミニウムボディが採用されますが、今回は省略。

フレームタイプの場合、フレーム部分にどんな素材が採用されているのかを確認するようにしましょう。

 フレームの素材:アルミニウム

PC7000の深溝フレーム

ほとんどのフレームタイプのスーツケースは、フレーム部分にアルミニウムを採用しています。

加工しやすく、コストも安価なため、スーツケースの価格をリーズナブルに抑えやすいのが大きな魅力です。

ただし、アルミニウムは衝撃で曲がりやすく、フレーム部分が変形すると開閉できなくなるなど大きなトラブルに繋がりやすいです。

選ぶ際には、フレーム部分の耐衝撃性を高めるために、深溝設計など工夫しているモデルを選ぶようにしましょう。

1万円前後ですと、グリフィンランドのPC7000というフレームタイプのモデルがロングセラーで売れ続けています。

 フレームの素材:マグネシウム合金

フレームタイプのサンコースーパーライトMGC

国内メーカーのサンコーの全フレームタイプとエースの一部フレームタイプには、アルミニウムの代わりにマグネシウム合金のフレームが採用されています。

世界的にもマグネシウム合金を使ったフレームタイプは珍しいです。

マグネシウムは実用金属の中で最も軽く、耐衝撃性にも非常に優れているのが大きな特徴です。

ただしコストがかかり、加工にも高い技術力が求められるため、マグネシウム合金のフレームタイプスーツケースは日本の技術力の結晶ともいえるかもしれません。

特にサンコーというメーカーのスーパーライトシリーズは、とても丁寧に作られたスーツケースでベストセラーになっています。

ジンベエ

サンコーさんは120年の歴史を持つ老舗鞄メーカーで、ほとんど広告をうたないので知名度はそこまで高くありません。でも、職人技の光るスーツケースが魅力で、知る人ぞ知るスーツケースを作っています。

価格帯は4万円前後と安くありませんが、衝撃に強く安心感のあるスーツケースを求める方からよく選ばれています。

ソフトタイプのスーツケースの素材【全2種類】

レジェンドウォーカーのソフトタイプ

柔らかいファブリックな素材で作られているのがソフトタイプのスーツケースです。

よくパイロットやCAさん、ヨーロッパの方たちが引いているのを見たことのある方も多いのではないでしょうか?

最近ではファスナータイプにかなり差を詰められていますが、ソフトタイプは軽量性の高さが魅力です。

また、片開きなので荷物の出し入れがしやすかったり、フロントポケットに小物を収納しやすかったりするのも特徴の一つです。

ファブリックにどんな材質のものが使われるかはメーカーやモデルによって異なりますが、代表的なものをご紹介します。

6.ポリエステル

ノースフェイスのスーツケース*ソフトタイプで人気の高いノースフェイスのローリング・サンダー(左)

ソフトタイプによく使われるのが6番目のスーツケース素材であるポリエステルです。

衣類などにも使用されますが、耐久性に優れ、速乾性を持つためカビや湿気に強いという材質でスーツケースと相性が良いです。

コストも安価なため、低価格帯のソフトタイプスーツケースにもよく使われます。

高価格帯にもポリエステルを使ったソフトタイプのスーツケースがありますが、違いは“デニール(糸の太さ)”です。

1万円前後の格安スーツケースだと、あまり公開しているところは多くありませんが、400デニール以下の細く軽いポリエステル糸を使っている場合が多いです。

2万円以上するようなモデルだと、600デニールから1000デニール以上まで、高強度で摩擦にも強いポリエステル糸を使っています。

ソフトタイプで人気が高いのがノースフェイスのローリング・サンダーシリーズです。

7.バリスティックナイロン

バリスティックナイロンは軍事用に開発された素材で、強靭で摩耗や桐崎にも強い材質を持ちます。

TUMIBRIEFINGなど、一部メーカーがソフトタイプのスーツケースにも採用していますが、価格も10万円を超すモデルが多く、かなり高価格帯なソフトタイプのスーツケースに使われています。

素材で選ぶスーツケースの楽しさ

今回はスーツケースに採用されている素材ごとの材質の違いやメリットデメリットについてご紹介しました。

スーツケースを選ぶ際に、使われている材質までこだわると、自分の必要としているスーツケースのイメージがわきやすくなります。

何より、材質までこだわって選んだスーツケースには愛着がわきます

旅の相棒になってくれる自分だけのスーツケースを見つけましょう。

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