スーツケースの耐用年数について【現役ガイド執筆】

 

「スーツケースの耐用年数はどれくらい?」

スーツケース選びについて相談される際に時々受ける質問です。

家電などは耐用年数が定められていますが、スーツケースについては特性上耐用年数を公式にしているメーカーはありません。

そこで、これまでの経験や、スーツケースメーカーさんなどにプライベートで教えていただいた情報をまとめてご紹介したいと思います。

この記事の
筆者:ジンベエ
海外ガイド歴12年。旅行会社の代表をしております。
趣味がスーツケース収集で、使用したスーツケースは70台以上。お役に立つ情報をお届けします。

スーツケースの耐用年数について

スタリアVsの全体像

スーツケースは受託手荷物として預けると、手荒に扱われることもあるため、耐用年数を考えるときにはスーツケース各部分の素材としての耐用年数使用回数での耐用年数(耐用回数)の2つに分けて考えてみましょう。

1.スーツケースの素材自体の耐用年数

フリクエンター・マーリエのボディ

スーツケースのメインとなるボディに最近よく使用されているのはポリカーボネートなどの樹脂素材です。

ポリカーボネートは小屋の屋根材として使われるなど、非常に耐久性の高い素材で耐用年数は10年~15年とも言われています。

紫外線に弱いという短所がありますが、各メーカー紫外線に対する耐性を強める吸収剤を含めるなど工夫しているので、紫外線による劣化も通常使用では心配する必要はないでしょう。

スタリアVsのキャスター

スーツケースで次に重要なのがキャスター

キャスターによく使われているのはPU(ポリウレタン)という素材
別名ウレタンゴムとも呼ばれ、適度な弾力と摩耗に強い特性を持ち、スーツケースのキャスターにはぴったりな素材です。

ただし、あまり知られていないのですがポリウレタンは湿気にさらされると加水分解と呼ばれる反応を起こして劣化するという大きな短所があります。

そのためポリウレタン製のスーツケースキャスターの耐用年数は大体3,4年と思っておきましょう。

「何年か前に購入したスーツケースが全然使っていないのに、引き出しから出したらキャスターがボロボロ…」というトラブルについてよく聞きますが、これは加水分解による劣化です。

日本は湿度が高いので、どうしてもキャスターの劣化は避けられません。

HINOMOTOキャスターについて

高級スーツケースにもよく採用されているキャスターにHINOMOTOキャスターがあります。
*HINOMOTOキャスターは日本の日乃本錠前の製品です

中でも、HINOMOTOのサイレントランキャスターには、ポリウレタンの代わりに日乃本錠前と三菱ケミカルが共同開発したLisof(ライソフ)とうエストラマー系の新素材が使われています。

大きな特徴としてポリウレタンのように加水分解しないため、耐用年数が格段に向上しています。

長く愛用できるスーツケースをお探しであれば、候補のスーツケースにHINOMOTOサイレントランキャスターが採用されているかどうか確認するのもおすすめです。

2.スーツケースの使用ベースの耐用回数

羽田空港のラゲージレーン

スーツケースの耐用年数には使用頻度も大きく影響します。

月に2回出張でスーツケースを使うヘビーユーザーの方だと10年で使用回数は240回になりますが、海外旅行を年に1回程度のライトユーザーの方なら10年で使用回数は10回ほどです。

受託手荷物としてスーツケースを預けても、国や空港によって扱い方も異なるため、スーツケースを何回使えるのか耐用回数を公表しているメーカーは現状ありません。

ただし、経験則からのおおよその目安として、2万円~3万円程度の名のしれたスーツケースメーカーさんの製品であれば、30回前後の使用には十分耐える事ができると思います。

これが激安スーツケースだと、半分以下の5回~15回でしょう。
*激安スーツケースは当たり外れが激しく、幅が広いです。

エース公式サイトより

違いは設計段階での品質管理の問題で、例えば最大手のエースさんのスーツケースだと、品質管理のためにスーツケースに重りを入れた状態で…

  • 120cmから5回の落下テスト
  • 7,500回の開閉テスト
  • 16kmの走行テスト

など、8種類のテストを実施しています。

先程紹介したHINOMOTOキャスターは、荷物を入れた状態で30kmの走行に耐えられるよう設計してあるそうです。

激安スーツケースは、こういった品質管理にコストをかけずに、中国の工場から届いたものをそのまま送るだけのもあり、安いですが品質もそれなりのため耐用年数は期待しないほうがいいでしょう。

スーツケースの耐用年数をサラッとまとめ

スーツケースメーカーでは耐用年数を公表していないので、スーツケースの素材から考えた耐用年数と実用で何回ほど使えるのか考えた耐用回数についてご紹介しました。

【スーツケースの耐用年数】

  • スーツケース保管時の耐用年数
    PUキャスター…2~3年
    HINOMOTOキャスター…10年前後
  • スーツケース使用時の耐用回数
    激安スーツケース…10回~15回
    2万円以上のスーツケース…30回前後

そんなに頻繁に使用しないライトユーザーの方だと、正直どれを選んでもそんなに問題はないかもしれません。

ただ、いわゆる激安スーツケースは使う度にキャスターの調子が悪くなっていくなど快適性が下がってきます。

もし予算が許すならばですが、現役ガイドとしておすすめは2万円前後のスーツケースです。

ジンベエ
5,000円から10万円のスーツケースまでいろいろ使ってきましたが、1万円から2万円のスーツケースに切り替えた時の品質の変化が一番大きいと思います。

しっかりしたスーツケースは耐用年数も長いので、スーツケースをお選びの際には長い目で見て愛用できるスーツケースを見つけるようにしましょう。

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