「スーツケースの耐用年数はどれくらい?」
スーツケース選びについて相談される際に時々受ける質問です。
家電などは耐用年数が定められていますが、スーツケースについては特性上耐用年数を公表しているメーカーはありません。
そこで、これまでの経験や、スーツケースメーカーさんなどにプライベートで教えていただいた情報をまとめてご紹介したいと思います。
高寿命にこだわったおすすめスーツケースやそのレビューもあるので参考にしてみてください。
筆者:ジンベエ
趣味がスーツケース収集で、使用したスーツケースは70台以上。お役に立つ情報をお届けします。
スーツケースの寿命について
スーツケースは受託手荷物として預けると、手荒に扱われることもあるため、耐用年数を考える時には…
- スーツケース各部分の素材としての耐用年数
- 使用回数での耐用年数(耐用回数)
の2つに分けて考えてみましょう。
1.スーツケースの素材自体の耐用年数(寿命)
スーツケースのメインとなるボディに最近よく使用されているのはポリカーボネートなどの樹脂素材です。
ポリカーボネートは小屋の屋根材として使われるなど、非常に耐久性の高い素材で耐用年数は10年~15年とも言われています。
紫外線に弱いという短所がありますが、各メーカー紫外線に対する耐性を強める吸収剤を含めるなど工夫しているので、紫外線による劣化も通常使用では心配する必要はないでしょう。
スーツケースで次に重要なのがキャスター。
キャスターによく使われているのはPU(ポリウレタン)という素材。
別名ウレタンゴムとも呼ばれ、適度な弾力と摩耗に強い特性を持ち、スーツケースのキャスターにはぴったりな素材です。
ただし、あまり知られていないのですがポリウレタンは湿気にさらされると加水分解と呼ばれる反応を起こして劣化するという大きな短所があります。
そのためポリウレタン製のスーツケースキャスターの耐用年数は大体3,4年と思っておきましょう。
「何年か前に購入したスーツケースが全然使っていないのに、引き出しから出したらキャスターがボロボロ…」というトラブルについてよく聞きますが、これは加水分解による劣化です。
日本は湿度が高いので、どうしてもキャスターの劣化は避けられません。
このため、スーツケース本体の寿命というよりも、キャスターの寿命が先に来てスーツケースが使えなくなるというパターンがほとんどです。
HINOMOTOキャスターについて
高級スーツケースにもよく採用されているキャスターにHINOMOTOキャスターがあります。
*HINOMOTOキャスターは日本の日乃本錠前の製品です
中でも、HINOMOTOのサイレントランキャスターには、ポリウレタンの代わりに日乃本錠前と三菱ケミカルが共同開発したLisof(ライソフ)とうエストラマー系の新素材が使われています。
大きな特徴としてポリウレタンのように加水分解しないため、寿命が格段に向上しています。
長く愛用できるスーツケースをお探しであれば、候補のスーツケースにHINOMOTOサイレントランキャスターが採用されているかどうか確認するのもおすすめです。
2.スーツケースの使用ベースの耐用回数
スーツケースの耐用年数には使用頻度も大きく影響します。
月に2回出張でスーツケースを使うヘビーユーザーの方だと3年で使用回数は72回になりますが、海外旅行を年に1回程度のライトユーザーの方なら3年で使用回数は3回ほどです。
受託手荷物としてスーツケースを預けても、国や空港によって扱い方も異なるため、スーツケースを何回使えるのか耐用回数を公表しているメーカーは現状ありません。
ただし、経験則からのおおよその目安として、2万円~4万円程度の名のしれたスーツケースメーカーさんの製品であれば、50回前後の使用には十分耐える事ができると思います。
これが激安スーツケースだと、半分以下の10回~15回でしょう。
*激安スーツケースは当たり外れが激しく、幅が広いです。
違いは設計段階での品質管理の問題で、例えば最大手のエースさんのスーツケースだと、品質管理のためにスーツケースに重りを入れた状態で…
- 120cmから5回の落下テスト
- 7,500回の開閉テスト
- 16kmの走行テスト
など、8種類のテストを実施しています。
先程紹介したHINOMOTOキャスターは、荷物を入れた状態で30kmの走行に耐えられるよう設計してあるそうです。
激安スーツケースは、こういった品質管理にコストをかけずに、中国の工場から届いたものをそのまま送るだけのもあり、安いですが品質もそれなりのため耐用年数は期待しないほうがいいでしょう。
1万円以下のノーブランドスーツケースを選ぶより、3万円前後のしっかりしたメーカー製のスーツケースを選んだほうが、長い目で見るとお得だったりします。
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寿命で選ぶおすすめスーツケース3選
スーツケースの素材の耐久性や使用頻度から考えた寿命についてご紹介しました。
ここでは「少しでも高寿命で長く使えるスーツケースが欲しい」という方のために、おすすめのスーツケースをご紹介したいと思います。
セルフで純正品のキャスターに変更できるなど、こだわりのスーツケースをご紹介します。
1.MAIMO COLOR YOU plus
HINOMOTOサイレントランキャスターが自分で交換可能!
高寿命なスーツケースとして現在最もおすすめなのがMAIMOのCOLOR YOU plusです。
HINOMOTOサイレントランキャスターを搭載し、なおかつAmazonなどで交換用の純正品キャスターも1,260円で購入できます。
そのため、理論上はボディが割れてしまうなど、本体の故障が来るまではずっと愛用できるスーツケースです。
サイレントランキャスターは加水分解しないため、使用頻度がそこまで高くない方でも、クローゼットにしまいっぱなしでも経年劣化しにくいのが特徴です。
なおかつボディには耐久性に優れたポリカーボネート素材を100%使用しているため、使用頻度が高い方にもおすすめです。
これでいてスーツケースの価格が15,000円前後~と非常にコスパが高いです。高寿命スーツケースの代表格と言えます。
2.フリクエンター クラムアドバンス
世界一の静音性を誇る特許キャスターがセルフ交換可能!
MAIMOのスーツケースが爆発的人気になるまでは、“キャスターが自分で交換できる”といえばフリクエンターのスーツケースでした。
中でもクラムアドバンスはフリクエンターのベストセラースーツケースで、フロントオープンポケットやキャスターストッパー、静音性に優れた特許キャスターと、非常に多機能性に優れたスーツケースです。
キャスターは特許を取得した特殊な回転をする機構を採用しており、スーツケースの王様と呼ばれるリモワやHINOMOTOのキャスターよりも高い静粛性を誇ります。
引き心地も非常にスムーズで、滑るような感覚は他のスーツケースにはないやみつきになる魅力があります。
スーツケース本体も耐久性に優れたポリカーボネートを使用しており、ハードユーザーのニーズにも応えられます。
クラムアドバンスもキャスターを自分で交換しながら高寿命で愛用できるスーツケースです。
MAIMOがシンプルなスーツケースなのに対して、クラムアドバンスは機能性に優れたスーツケースです。寿命だけでなくスーツケースに何を求めるかで選ぶと良いと思います。
3.サンコー スーパーライトMGC2
マグネシウム合金をフレームに採用の高寿命スーツケース
サンコーのスーパーライトMGC2は、フレームタイプで高寿命なスーツケースを探すなら外せない選択肢です。
サンコーはほとんど広告を出さないので知名度は高くありませんが、高い品質で知る人ぞ知るスーツケースメーカーさんです。
フレーム部分には、宇宙船や航空機に使用されるマグネシウム96%合金を採用。
非常に硬く耐久性に優れますが、加工が難しいため、現状でスーツケースのフレームに採用できているのは、サンコーくらいです。
このマグネシウム合金フレームは軽量性にも貢献していて、フレームタイプながら93Lサイズでも4.3kgしかなく、老若男女問わず扱いやすいのが魅力です。
また、キャスターには加水分解しない高寿命が魅力のHINOMOTOサイレントランキャスターを採用しているため安心です。
4万円台と決して安いスーツケースではありませんが、「高寿命で品質のよいスーツケースを長く使いたい」という方におすすめです。
スーツケースの耐用年数(寿命)をサラッとまとめ
スーツケースメーカーでは耐用年数を公表していないので、スーツケースの素材から考えた耐用年数と実用で何回ほど使えるのか考えた耐用回数についてご紹介しました。
【スーツケースの耐用年数】
- スーツケース保管時の耐用年数
PUキャスター…2~3年
HINOMOTOキャスター…10年前後 - スーツケース使用時の耐用回数
激安スーツケース…10回~15回
3万円前後のスーツケース…50回前後
そんなに頻繁に使用しないライトユーザーの方だと、正直どれを選んでもそんなに問題はないかもしれません。
ただ、いわゆる激安スーツケースは使う度にキャスターの調子が悪くなっていくなど快適性が下がってきます。